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念願の花鋏

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花に関してはまるっきりしろうとだが、なぜか歳をとるごとに好きになって、時々小さなスペースに見様見真似で生けて愉しんでいる。
特に好きなのは実ものや枝もの。これを切るのに、これまでは台所で食材以外の雑多なものを切る鋏を使っていたが、堅く太い枝を切るにはやはり無理がある。
そんなことで、何時からともなく花鋏を探していた。

昨年、京都の有次でおろし金を買ったとき、花鋏も見せてもらったが、知識のないせいか今一歩ピンとこない。続いて菊一文字にも出向いたが、やはりよくわからずに、購入には至らなかった。

勝手に敬愛しているとあるお花の大家が、やはり京都の老舗某のわらび手の花鋏を愛用している。年末年始に不便な思いをして、改めて花鋏が欲しいと思ったのだったが、老舗某のものはさすがに私には身分不相応である。形だけはわらび手を真似することにして、都内の刃物店で求めることにした。

神田に、京都で花鋏を見せてもらった菊一文字の東京支店がある。自分で鋏を研ぐことはとてもできないので、長く使うにはアフターケアの窓口は近いに限る。
小川町の交差点にあるちいさな店舗。一番奥のガラスケースから花鋏を出してもらい、わからないなりにも話を聞きながら、いくつか握らせてもらう。
前出の大家は著書のなかで、花鋏は持ってみて手に馴染むものを、最初の一丁はいいものを、と書いていた。漠然とした指南である。財布との相談で無闇にいいものというわけにはいかないけれど、しろうとだから一番手頃なものでいいとは私も思わない。堅い枝ものは鋏に負担をかけるだろうし、きちんと手を入れて長くつきあうことができれば、結果的に高い買物にはならないと思っている。
結局一番手馴染みがよかったのは、やはりというべきか、握ってみたうちで一番高価なものだった。更に上を見ればきりがないのは勿論だが、残念ながら我が家の財布にはきりがある。
ハイス鋼という比較的強い鋼を使った、わらび手の花鋏。折角なのでお願いして名前を入れていただいた。

家に帰り、さっそく買ってあった啓翁桜の枝を切る。当たり前かもしれないが、台所鋏でミシミシ切っていたのが嘘のようにスパッと気持ちのいい切れ味。使用後は水気を拭き取り、時々ミシン油をさすとよいという。
これでいい枝ものに出合っても、躊躇わずに買うことができると思うと嬉しい。切れ味が泣かないように、これからどんどん使っていきたいと思っている。

by TokyoRomanTheater | 2011-01-16 15:01 | 工芸のこと

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