人気ブログランキング | 話題のタグを見る

新しい家族


…といっても、残念ながら子供が産まれた、なんていう目出度い話ではありません。。。

少しだけ涼しく空気の乾いた陽気いいある日、気張って大掃除を敢行中、掃除機が突然動かなくなった。

ついさっきまで、順調に埃を吸っていたのである。それが、フットスイッチを強く押しても、電源を入れ直してもうんともすんとも云わない。思いつく限りのことをいろいろ試したが、虫の息さえたてない完全な停止に、あぁこれはもう寿命なのだと悟った。

独・エレクトロラックス社のこの掃除機は、ひとり暮らしを始めた頃に、面倒な掃除機がけを愉しく続けていきたいと云う思いを込めて買ったもので、薄給だった私にはそれなりに思い切った買物だった。深みのある山吹色がことのほか気分を高めてくれ、冷蔵庫と並んでなくてはならない家電である。座敷箒を手に入れて、昔のように箒と雑巾で掃除をと思った頃もあったが、まだまだ元気なこの掃除機を使わないことを思うとなんだか寂しくなり、すぐに戻った。だんだん旧くなって、ダストパックが手に入らなくなっても、どうにか探して使い続けていた。

取扱説明書には5年間は部品を保有するとある。ゴミへの意識が高く、いいものを長く使うイメージのドイツの会社にしては随分短くはないだろうか。メーカーに問い合わせるが、やはりもう部品がなく、修理不能とのことだった。

それならば、今こそいつかやろうと思った箒と雑巾の出番ではないか。掃除機を買い替えることなど頭になかった私は、しばらくそうしていた。これはこれで悪くない。しかし、きちんとやろうとすれば掃除機以上に大掛かりになり、日々のこととして続けるには少し、私の気持ちが足らなかった。

今時のハイテクな掃除機は、正直云って厭である。小さな家とはいえ、愉しく掃除機をかけたいのは今も同じ。ゆっくり考えよう。
そんなとき、ふと思い出したものがある。もう随分遠い記憶で、どこで見たのかも思い出せないが、こんなので毎日掃除ができたら、好いだろうなぁと思ったことだけは鮮明に覚えている。軽い気持ちで検索すると、果たして今なお発売中の商品であった。

新しい家族_c0175537_14515675.jpg

英・Numatic社「掃除機ヘンリー君」。
もとは業務用の掃除機に、遊び心で顔を書いたところ評判になり、1981年に製品化。以来、デザインはほとんど変わらず、構造は極めてシンプル。こういう機能の単純な家電は気持ちがいい。5色+ガールフレンドのヘティちゃんのなかから、迷った挙げ句にやはり黄色を選んだ。昔どこかで見たのは、緑色だったような気がする。イギリス南西部の工場から、はるばる船に乗って日本にやってきたのだそうだ。
ドイツ製の先代と比べると、パイプやフロアブラシの造りは多少貧相であるものの、かえって軽くて取り回しがいい。吸引力も、もともと業務用として作られたものだけに申し分ない。
掃除機以外の何者でもないのに、なぜか家族のような親しみがもてるヘンリー君。
旧い家にも不思議と違和感なく溶け込んで、今はさながらドラえもんのように、我が家の押入で暮らしている。

by TokyoRomanTheater | 2011-09-29 14:54 | 日々のこと

<< 大倉ひとみ個展「幻燈街」@ギャ... 脱レンジ宣言      >>